「安心・安全」を確立することで3Dプリンタの可能性を高める動きが広がっている。
3Dプリンタ用のレジン「エキマテ」。その活用方法に広がりをみせている。
歯科医院ではどう活用しているのか。実践例から活用のポイントをみていこう。
歯科医院でも3Dプリンタの活用が広がりつつある。医療機関にとってみれば「効果は理解できるがどうやってやれば良いのか」と、手探り状態であることが多いだろう。3D プリンタを歯科医院全体で上手に活用するための参考になるのがさいたま市にある「T & T 歯科・矯正歯科クリニック」だ。瀧澤史夫、瀧澤知子両医師を中心に、歯科衛生士や歯科技工士などで日々患者と向き合っている。T & T 歯科・矯正歯科クリニックは「歯が痛い」といった悩みだけでなく、口腔内のトラブルを未然に防ぎ、健康を維持するために通院しやすい歯科医院を目指している。
3Dプリンタの採用は早かった。瀧澤知子医師(以下、知子医師)が約5年前に興味を持ち始め、使い出した。使い勝手の良さを実感できたものの、3Dプリンタに欠かせない材料「レジン」の臭いが強く、扱いづらい課題に直面した。利点が勝り本格的な活用 を決め、増築までして3Dプリンタを本格的に運用しはじめた。「活用が進むと、スタッフにも使ってもらうので安心安全な材料を使いたい気持ちが強くなりました」(知子医師)。
この頃にエキスパートマテリアルズが販売するレジン「エキマテ」に出会った。エキマテは「安心・安全」を前提に、強い臭いも発生させないため、室内でも活用しやすい。瀧澤史夫医師( 以下、史夫医師)は「 3Dプリンタを置く部屋と診察室は近いですが臭いは気になりませんね」と話す。
何度も作り直せる安心感
3Dプリンタの最大のメリットは、コストではない。データさえあれば、何度でも作れることである。知子医師が活用するのは矯正用マウスピー スの試作だ。マウスピース矯正は、少しずつ歯を動かしていくもの。一般的には石こうで患者様の歯型をとる。「石こうの特性上、割れてしまうことがあります。割れたときに、もう一度患者様に型取りをお願いするのは気が引けます。エキマテを使うと何度でもやり直せるので様々な観点から治療方針を考えられます」(知子医師)。
ここでエキマテを使った3Dプリンタが出番となる。歯をどう動かすかをシュミレーションすることはパソコンの画面上でもできる。実物を手にすることで患者様にも歯型を見せながら方針を説明できる。知子医師は「欲しい患者さまには差し上げています。意外と人気です」と笑う。
一方で史夫医師も治療方針の策定に活用している。例えばインプラント治療の方針策定だ。CTスキャンで 取得した歯形データをSTL データに変換する。そのデータを3Dプリンタへ転送することで造形できる。「パソコンの画面上でも分かりますが、やっぱり手にとったほうが治療方針を考えやすいですね」(史夫医師)。
瀧澤医師がエキマテに満足していることが3つある。まず、廃棄量を減らせていることだ。石こうは産業廃棄物となる。廃棄には費用と手間がかかってしまうため、3Dプリンタで大幅に削減できる。カーボンニュートラル時代を迎えるにあたり、GX(グリーン・トランスフォーメーション)が求められるなかで、適切な材料といえるだろう。
当番制で全員が担当
2つ目が価格だ。治療方針策定に活用するため、診療報酬と紐づかない。いかに経済的で安定供給してく れるかがカギを握る。瀧澤医師が選んだのが、エキスパートマテリアルラボラトリーズだった。医療機関であれば、専門業者に依頼することが多い。医療機関の業務を理解できているため、かゆいところに手が届く。ただ高額になり採算が合わない。そこで瀧澤医師は一般的な機材で取り組むことにした。知子医師は「野田さん(裕介社長)が丁寧に教えてくれたので不安もなかった」と笑う。「まだ万能な道具とはいえないが価格を考えると十分な役割を果たしてくれている」(史夫医師)。
3つ目が全員ができる手軽さだ。T & T 歯科・矯正歯科クリニックではスタッフ全員が3Dプリンタを操作できることだ。特定の人にしかできないと、退職した時にたちゆかなくなる。清掃といった日常業務のひとつとしてとらえ、当番制を採用している。「だれかに任せると気が利く人に依存してしまいます。全員ができることがとても大切です。私も当番に入っていますよ」(知子医師)。全員で取り組む環境は日頃から平日に1時間勉強会を開くなど素地が整っている。
エキスパートマテリアルラボラトリーズは、T&T歯科・矯正歯科クリニックのように医療機関における活用の可能性拡大を追求してまいります。
T&T歯科・矯正歯科クリニック
住所:さいたま市見沼区南中丸 546-1
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