楽器文化を下支えするヤマハ。サクソフォンの研究開発にエキマテが活躍している。
社内外で活用するためには臭いが気にならず、口に咥えるため安全・安心が必須の条件となる。
ヤマハがエキマテで目指すのは演奏の定量化だ。その試行錯誤にエキマテが貢献している。
ヤマハの第 2 研究 開 発 部 楽 器 グループ 主事の庄司哲郎氏はサクソフォンの研究開発にエキマテを採用した
最もダイナミックレンジが広い木管楽器といえば、サクソフォンだろう。音色は人間の声に極めて近く、自由に表現しやすいのが特徴だ。ソロ楽器としてジャズの歴史をリードし、クラシックの世界でもソロに限らず、室内楽、オーケストラなど、幅広く活躍している。1840年代にベルギーの楽器製作家のアドルフ・サックスが発明した。日本で業界を常にリードしてきたのがヤマハだ。1967年にヤマハブランド初のサクソフォン「YAS-1/YTS-1」を発売し、以来半世紀以上にわたって、経験に培われた技と最新テクノロジーを駆使し、新たなる楽器を世に送り出してきた。アーティストはもちろんのこと、楽器を初めて手にする方々、そして広く音楽を愛するすべての方々の感動のために、日々取り組んでいる。
最近、力を入れているのが音色や吹奏印象を数字で再現することだ。
音楽は感性に委ねられるところが大きい。再現性を高めるうえで欠かせないのが、演奏情報をデータとして計測することである。
ここでエキスパートマテリアルラボラトリーズが開発したオフィス用レジン「エキマテ」が活躍している。研究開発を目的とした計測専用のマウスピースづくりに活用されているのである。第2研究開発部楽器グループの庄司哲郎主事は「エキマテのおかげで計測専用のマウスピースが作れるようになりま
した。奏者にも安心して演奏してもらっています。」と喜ぶ。
サクソフォンの演奏方法をおさらいしよう。サクソフォンは、右手の親指、上の歯、ストラップの3カ所で支える。下唇は下の歯の上にかぶせるように使う。実際に口をつけるのがマウスピースだ。マウスピースをあてたときの口の形と、口の周りの筋肉の使い方をアンブシュアという。アンブシュアによって音色や音程が変わるため、しっかりコントロールすることが上達の近道となる。
ヤマハが取り組む定量化では、演奏者が吐く息の圧力を計測することが重要となる。測定にあたり、演奏の邪魔となっては正確な測定ができない。そこで考え出したのがセンサー付きマウスピースだ。吹鳴中の口腔内圧力やアンブシュアの具合を計測するものである。
「演奏者に聞いても『強く吹いている』といった感覚でしか答えてもらえませんでした。データで確認することで分析や比較の幅が広がります。」(庄司氏)
このセンサー付きマウスピースでは、口腔とセンサーをつなぐ細長い穴で圧力を計測する。この細長い穴は金型による製作が難しい。ちょうどその頃3D プリンタが流行りだしていた時期だった。他社製品を使い成形したところ、口にくわえると苦みを感じてしまった。奏者に安心して、演奏してもらう道具とは言い切れなかった。「演奏者に自信をもってお願いできる素材を探していたところ、エキマテと出会いました。野田さん(弊社代表)が親切に教えてくださいました」(庄司氏)。
簡単に成形できるようになったことで、マウスピースをたくさん用意して実験できる。研究開発では形状を少しずつ変えたマウスピースを用意し、奏者に試してもらうことが多い。「新型コロナウイルス感染症拡大で、マウスピースを衛生的に使いたいという要望も高まってきました。エキマテなら用途に応じてすぐに用意できるところも気に入っています。」(庄司氏)。
オフィス用レジン「エキマテ」は低アレルギーで食品衛生法にも適合している。レジン特有の臭いもせず、手袋で作業する必要もない。オフィスビルでも十分使える。帰宅前にデータをセットしておくと、翌朝出社したときには出来上がっている。
研究開発のスピードアップに貢献できる。思いついたアイデアをカタチにできるエキマテ。ヤマハの管楽器研究開発に貢献していきたい考えだ。